【音声レビュー】
最近読んだ雑誌の感想を語るのは誰だ
第1回:
『TV BROS.2020.6月号』ほか

コンナトキダカラコソとかじゃなくて、日々、変わらず雑誌を読んでます。ひとりでボヤいたりムムムとうなりながらページをめくる時間をそのままに、雑誌の感想を音声にてお届けします。

竹内厚
竹内厚
編集者、ライター。『Meets Regional』ではアーティスト取材連載「街にイルアートな人」を担当。コロナで始めたことは手洗いとベランダの鉢植え。

最近読んだ
雑誌についての話

最近読んだのは、
たとえばこんな雑誌

『spectator Vol.46 
秋山道男 編集の発明家』

秋山道男が乗り移ったみたいな、元気で「みんなの心にねじを巻く」ような誌面づくりが最高。読みどころとしては、噛み合ってないところも含めて楽しい「菅付雅信vs赤田祐一」という2人の編集者対談に、リトルモアの編集者・加藤基さんによる秋山道男回想が印象的。飲みに行くのでも、まず秋山道男さんからファックスで計画書が送られてきて、その後も何度もしつこく電話がかかってきたという。

『spectator Vol.46 秋山道男 編集の発明家』

『MOMENT 2 
a trans-local magazine』

デトロイト、台北、鳥取という3つの街での取材記事をベースに、その間に挿入される単発記事も、香山哲のSFマンガ、磯野真穂と植本一子による相互人生相談、サンフランシスコの路上に置かれた巨岩をめぐる顛末記…と気がきいている。絵本のような表紙のつくりにして、特集タイトルは帯に、というデザインもフレッシュだ。

『MOMENT 2 a trans-local magazine』

『手のひら1 
問いからはじまる』

創刊号ながら、最後までこの雑誌自体の説明や編集者のことばもなし(見落としてる?)。特集は中村哲医師で、後半は脈絡なくいろんな書き手の文章が同じレイアウトで続く、という不思議さ。けど、長島有里枝、橋本倫史、大山顕、下井草秀、urbansea、東浩紀……とその書き手の並びがいいからOK!

『手のひら1 問いからはじまる』

『NEUTRAL COLORS 
ISSUE1』

雑誌『NEUTRAL』や『TRANSIT』をつくってきた編集者の加藤直徳さんが、20代のデザイナー加納大輔さんに素材をまるっと渡してレイアウト、印刷はオフセットとリソグラフをまぜて、用紙もいろいろ使って、という結果できあがったのは、理屈を超えた直感的な紙の束とでもいうべき創刊号。色やイメージが渾然となってパラパラめくるだけでも楽しい。音声中では、ユザーンの「チッラー日記」について長く話してしまいました。

『NEUTRAL COLORS ISSUE1』

『TV BROS. 2020.6月号』

音声中で話した「“特集”の特集」だけでなく、歴代の連載執筆者がそろって登場。別冊付録や、読者投稿欄「ピピピクラブ」で見出された過去10年間の「トレンドワード」を辞書化した企画も読み応えあり。た行:[大した価値観はないので、ズレることはない]夫婦の価値観のズレについて尋ねられた、杉村太蔵のもっともな回答。[高切枝バサミ]『松任谷由実のオールナイトニッポンTV』でユーミンが付けた布袋寅泰のラジオネーム。……とか。

『TV BROS. 2020.6月号』

『群像 2020.6月号』

巻頭の小林エリカ「脱皮」は、言葉を失ってしまう謎の病気が流行して、マスク生活が当たり前になった世界という、コロナ禍に対応した物語。気になる連載も多くて、そっちから読んでしまうのだが、デザイナー川名潤さんの連載「極私的雑誌デザイン考」は、今回、コロナ対応の番外編として日記体裁に。群像の表紙デザインの作り方も明らかに。ちなみに、その表紙を飾るアーティストが毎号誰なのかも楽しみのひとつ(今号は京都の佐貫絢郁さん)。

『群像 2020.6月号』

『自家中毒 
つくづく休刊記念増刊号』

個人的には昨年、読んだ雑誌のなかで最も楽しんだ雑誌『つくづく』。創刊号にして休刊宣言をしていたり、冒頭から「それ、誰が読むんですか」と書いてるように、自虐味の強さも味わいになってたけど、そんな「売れない」インディーズ雑誌がさらにPR誌まで刊行。『つくづく』を読んだ感想を書店員らが寄せている。のっけから、ホホホ座山下店長により「サブカル=サブいカルチャー論」が炸裂。雑誌好きの「自家中毒」がグルグルグルグルする。

『自家中毒 つくづく休刊記念増刊号』

企画・文・写真・声:竹内厚
編集:松尾修平

ハッシュタグ

TOPにもどる